苫小牧CCS実証試験センターの視察

 苫小牧CCS実証試験センターの視察の時が来た。長野県経営者協会で段取りをしてもらい、7名の者が参加した。

2024年6月6日 ルート図

 CCSは「Carbon dioxide(二酸化炭素を) Capture(回収して) and Storege(貯留する)」の頭文字をとっている。実際には、工場や発電所などから排出されるCO2を含んだガスからCO2を分離・回収して、地下深くの安定した地層の中に貯留する技術である。

 苫小牧CCS実証試験センターの広報渉外グループ長である山岸和幸氏が現地の施設を見学しながら説明をしてくれた。

 このセンターに来て説明を受け知ったことはたくさんあるが、センターは今モリタニングに入っていることがビックリであった。2019年に30万トンのCO2の圧入達成により、圧入したCO2ぼ挙動を把握し、微小振動、自然自信を常時観測し、海洋環境調査を通じてCO2の漏れがないか監視している。

 貯留したCO2は、貯留層の隙間にある地層水(飲料に適さない塩水)を押しのけて徐々に貯留槽内に広がっていく。上部には遮蔽層があるため、長期間にわたり貯留層内に閉じ込めることができる。その後CO2は、地層水に溶解し周辺の岩石と反応して鉱物化し、安定的に閉じ込めることができるとのことであった。 この場合、遮蔽層が蓋の役目をして、貯留層の中のCO2は漏れないようになっているそうである。

(CCSプロジェクト資料より)

 屋上に出て分離・回収設備の説明を受けた。

右はCO2吸収塔でアミン溶液によりCO2を吸収、中がCO2放散塔でアミン溶液を加熱することによりCO2を放散、左が低圧フラッシュ塔で減圧効果等でアミン溶液からCO2を放散する。

センターの山岸グループ長から説明を受けている。

分離・回収設備

分離・回収設備で高純度のCO2をこの圧入井で海中の地層に圧入していく。これは萌別層圧入井で、深度1,000~1,200 m。

この圧入井は滝ノ上層圧入井で、深度2,400~3,000m。

 政府は、2030年までに実用化を目指している。今後は、CCSコストの低減に向けた取組、CCS事業に対する国民理解の増進等が具体的アクションとしている。

 非常に刺激を受けた。いい視察をさせてもらったことに感謝だ。

苫小牧

羽田11:00発のフライトで苫小牧にやってきた。

 苫小牧は初めてである。

 新千歳空港からJRを乗り継いで苫小牧駅までやってきた。駅も時間によるのか、乗降客が少ない。

苫小牧駅

 目的は、明日6月6日の苫小牧CCS実証実験センターの視察と、苫小牧市役所の産業経済部企業政策室との懇談会である。

 前日の今日、苫小牧入りをした。時間がたっぷりあったので、明日のために、ゆっくりと苫小牧駅から南方面を苫小牧港まで巡り歩いてみた。

 午後2時ころからの行動であったが、車の量は少ないし、歩行者もほとんどいない、店は閉まっているという状況で、苫小牧ってどういうところなんだろうと首をかしげるばかり。その割には、ホテルが乱立している。

 とはいえ、主要官庁街でもあったらしく公的建物の所在を把握することができた。

2024年6月5日 ルート図

駅から南に延びる道路には、おしゃれな街灯が並んでいる。

 明日訪問予定の苫小牧市役所。12階建ての立派な建物で、隣には市役所第2庁舎があった。夜間休日受付は、第2庁舎で行っているらしい。

苫小牧市役所

市役所の先には苫小牧税務署。

道端にはピンクのオダマキが咲いていた。

街路樹でもあるのか、いたるところに咲いていて沈丁花のような甘い香りがした。

偶然に見つけた税理士会館。税理士会苫小牧支部だ。寄ってみようかと思ったが、そのまま通り過ぎてしまった。

苫小牧港までやってきた。

苫小牧港にあるマルトマ食堂。ここのホッキカレーが評判で、いつも混んでいる。観光客も並んで待つそうだ。営業時間が5:00~14:00。

マルトマ食堂の近くに海の駅。

持って帰れないわ。残念。北寄(ホッキ)は1ケ750円だと。

海の駅の道を挟んだ向かい側にピンコロ地蔵。長寿山地蔵尊だそうだ。

ピンコロ地蔵の隣にほっき貝資料館。閉まっていた。

王子製紙のチップ工場。

広い敷地で、ぐるっと塀に沿って回り込んだら、木材チップが積まれているのが見えた。

シロミミナグサ。道端に咲いていた。

裁判所

市民会館

市民会館の敷地内には苫小牧開拓記念像があった。

苫小牧市科学センター。ここでは宇宙ステーションミール展示室がある。時間が遅かったので、入れなかった。

パラボラアンテナとその仕組みが説明されている。

苫小牧市科学センターの敷地内の蒸気機関車。

 昼間、車や歩行者が少ないのは、多くの人が王子製紙で働いているからだと聞いた。5時を過ぎると、人通りも車も多くなりにぎやかになるらしい。店も夕方5時ぐらいからオープンのところが多い。

 苫小牧CCS実証試験センターの視察は、日経新聞社の編集委員をやっている安藤淳氏からお聞きして興味を持ったのがきっかけである。日本政府としても、2030年までにCCS事業化し、2050年までには現在のCO2排出量の1~2割相当を国内で地下貯留することを目標にしている。

 明日はどんな発見があるだろう。

表敬訪問

 クライアントのS法人は優良法人となっている。田中長野税務署長が、優良法人であるS法人を表敬訪問をしてくださった。表敬訪問は3回目である。

 取引高、利益、納税額、経理・申告内容、経営者の資質等の要件が整わないと優良法人になれない。優良法人になると、地域の優良法人会のメンバーになるのだが、S法人はすでに長野優良法人会のメンバーでもあった。

 毎月訪問し役員といろんな打ち合わせをしているS法人だけに、私は嬉しかった。S法人の業務内容の中には、早いうちから環境関係の事業にも取り組み、今の時代に必要とされていることを先進的に行っている。これから取り掛かっていては遅かっただろう。そのような面も評価されている。

 税理士としても、こうした税務署長の表敬訪問に立ち会うことは誇りである。長い税理士人生の中で、2回目のことであった。神経の使う仕事ではあるが、こうした喜ばしいこともたくさんある。もう少しクライアントと一緒に歩んでいきたいと思う。

The History of JRE

 北陸新幹線に乗車したとき、座席のポケットに入っている「トランヴェール」を読むことが楽しみだ。以前に沢木耕太郎氏が「旅のつばくろ」という題でエッセイが掲載されていて、その後「旅のつばくろ」「続・旅のつばくろ」が出版された。すぐに購入し、Kindleでいつも持ち歩いている。

 最近、トランヴェールで「The History of JRE」のページが始まり、第1回が「黄色い線の呼びかけから黄色い点字ブロックに」という題名での取り組み紹介があった。

 以前は「危ないですから黄色い線の内側に下がってお待ちください」というアナウンスが、最近「黄色い線」が「黄色い点字ブロック」に変更になっている。素晴らしいなあ~と思っていた。そのきっかけとなったこととその取り組みが、トランヴェール5月号の「The History of JRE」に掲載されていたのだ。

 2022年11月に、高崎駅のある一人の駅員の強い訴えが、高崎駅社員の心に響き、呼びかけが「黄色い点字ブロック」に変わったそうだ。他の駅でも「黄色い点字ブロック」という呼びかけに変わっているところが多い。こうした呼びかけで、健常者に「点字ブロック」が改めて認識されるようになった。

 上司に「黄色い点字ブロック」という呼びかけへの表現統一の徹底を提案したその駅員も視覚に障害のある人で、駅階段の点字ブロック上に人が集団でいたために迂回して転落した全盲者のことを聞いたのが、今回の訴えのきっかけとなったそうだ。

 JRのこうした取り組みが、少しずつ健常者の意識も変わっていくだろう。

 点字ブロックの正式名称は「視覚障害者誘導用ブロック」という。1965年に岡山県の男性が発明し、1967年に世界で初めて岡山県の交差点に敷設されたという。そして1970年代初めに高田馬場駅で大規模に敷設され、次第に全国に広まった。高田馬場駅は、近くにある日本点字図書館を利用する視覚障害者の乗降が多いからだろう。

 一人の強い想いが全国に、世界に広がっていくのだ。この記事を読んでとても気持ちいが暖かくなった。

言葉の三つの原則

 清水英雄氏の著書「ありがとう戦略」を久しぶりに読み返した。力が湧いてくる。前を向いて生活することができる。そんな内容がたくさん書かれていて、今まで事務所の朝礼でいくつか紹介してきた。

 言葉には三つの原則がある。

 一つ目は「言葉はレストランのオーダーのごとし」という原則。レストランに行って、食べたい料理を注文すれば注文通りの料理が運ばれてくる。言葉と仕事や人生との関係も同様と、清水氏は書いている。すごく分かりやすい。

 「どうして、やることなすことうまくいかないのだろう」「どうして不幸なことばかり起こるのか」というのはそういう状態を注文した結果だからという。つまり「忙しい」「疲れた」「困った」「できない」など消極的、否定的な言葉で「うまくいかない」「不幸」な状態を注文しているということ。

 二つ目は「言葉はエネルギー」という原則があるとのこと。言霊エネルギーがあり、ピンチの時ほど積極的な言葉を使うことによりピンチがチャンスに変えてくれる。

 三つめは「言葉は表情」という原則。積極的で肯定的な言葉を使っている人は表情も明るい。また生き方にも反映するので、生き方を変えたかったら、使う言葉も表情も明るく変えていくことが必要。言葉や表情が明るく変えるからこそ心も人生も明るくなっていくと清水氏は書いている。

 私の部屋にかけてある額の中に書かれている言葉。「楽生 楽笑」「楽しく生きる 楽しく笑う」人生って言葉やその思いがとても力になるという経験を、私もしている。

読書バリアフリー

 「文芸春秋2024年の論点100」という雑誌があることを知って、以来、購読している。100の論点を100の専門家が独自に解説している。読みだしたら面白い。知らなかった世界も知るようになった。

 事務所の職員にこの本を紹介したら、全員が手に入れたいとの希望があり、みんなに配布した。自分で購入しないとそのままになってしまうかもしれないが、興味を持ってくれただけでも嬉しい。結構クライアントに関連することも書かれていて、そのことでクライアントと話が深まるきっかけにもなっている。

 「読書バリアフリー」という法律があることを知ったのもこの雑誌だ。

 2019年に施行されている。すべての国民が等しく読書を通じて文字・活字文化の恵沢を享受することができる社会の実現」を目指している。

 現実的に、視覚障害者等、目で文字を読むことが困難な方々に対して、さまざまな情報を点字、 音声データなどで提供するネットワークの「サピエ」がある。厚生労働省補助事業で日本点字図書館がシステム管理をしている。

 いろんな形で日本点字図書館に関わっているが、今回電話を入れたときに「読書バリアフリー法」のこととサピエのことを話題にしたら、どんどん話が広がっていった。

 作家の市川沙央氏が「文芸春秋2024年の論点100」のなかで「障害の社会モデルを理解して読者バリアフリーの実現を」というテーマで書かれている。市川氏は「読書バリアフリー法」の理念が社会の隅々に普及したとき、読書は真の意味で文化的行為となると結んでいる。

 その役割の一端に「サピエ」があるということを知っていてほしい。

信州日経懇話会第8回例会講演会

 信州日経懇話会の今月例会講演会は、株式会社エラン・代表取締役会長CEO 櫻井英治氏が「エラン29年の軌跡」という演題で講演してくださった。

 起業の舞台裏から事業成長期、成長拡大期に何があったかも含めての、非常に刺激になる内容であった。最後の「経営者に伝えたい6つのこと」については、自分自身のこれからの気持ちの向け方に変化が生じたと思う。

 1 ビジョンや夢を語り将来をイメージする

 2 金銭的自由を手に入れ新たな挑戦を

 3 現状不満足の心で地震と会社の成長を止めない・・・止めると不平不満が出てくる。現状を満足しない組織づくり

 4 社員にインセンティブで夢を共有する・・・持株会など

 5 自身の常識は非常識、日本の常識は非常識

 6 緊張の汗をかかなくなったら交代

 自分がワクワクする計画でないと、投資家もワクワクしない。この一言は印象に残った。上場していない企業にとっても、組織のトップがワクワクするような計画でないと、そこで働く社員もワクワク感はないだろう。

 創成期においては、諦めない気持ち、どうすれば成功するかの一点集中突破、本気で打ち込み周囲の協力を得ること。

 成長期においては、ビジネス本来の目的の共有、ライバルや取引先の分類、外的要因の分析が必要。

 拡大期においては、揺るがない組織づくり、信用と情報を使った拡大戦略、中長期戦略の策定・次なる成長の種まきをしていく。

 最後の質疑応答で、少し前にスタートさせた事業について質問をさせてもらった。遺言代用信託のことである。

 エランは取引先が病院や介護施設が中心である。対象となる人たちには「困ったらエランに相談」と周知しているそうで、そのような関係から遺言代用信託の取り扱いを行っているとのことであった。

長野県経営者協会と中部経済連合会との懇談会

 今回で2回目の中部経済連合会との懇談会が開催された。1年ぶりにお会いする中経連の水野会長であるが、一方的にWebなどでお会いしているので空白期間を感じることがなかった。

 中経連は中部圏における広域的な総合経済団体で、社会経済等に関する諸問題についての調査研究を行い、積極的な提言や活動に取り組んでいる。

 まず水野会長からのご挨拶をいただき、次に碓井会長からのご挨拶と続いた。

 水野会長は中経連の役割として3つの事項を上げていた。

 1 地域と意見交換しながら政策等に対し提言する。

 2 各地域でお互いに参考になるものがないかの意見交換をすいていく。

 3 各地域の連携により活動の高まりを期待する。

 碓井会長は、長野県に集う者が心地よい県になるように努めている。地元をよくしていきたい、地元地元に貢献し、長野県の企業が世界に羽ばたくようになるといい、とおっしゃっていた。

 中経連の事業活動と経協の事業活動の説明の後自由懇談を行った。

 「松本高山Big Bridge」構想の話が出て、以前にユーチューブで見ていた私は、その件について触れさせてもらった。観光地は各拠点のことだけを考えがちだが、県境を越えた面の広がり、すなわち広域でできることの構想を実現できるといいと思っている。

 また中経連は、2024年度税制改正である賃上税制についても提言している。企業分類の「中堅企業」も経産省と一緒に決定したとのこと。経産省からの相談もあったらしい。しかし賃上税制も各種補助金も使いづらいのが現状だ。その点を国に伝えていってもらいたいと思う。

 国際経済交流の活発化等の分野では、外国人留学生域内就職率向上を目的に外国人留学生と企業の相互理解を促進した活動も行っている。長野県においても、このような活動を促進したらいいと思った。実際に、長野県で就職したかった留学生が、県内企業では不採用になり愛知県に就職した留学生もいる。人口減少、人材不足解消にもつながる。

 今回もいい刺激を受けた。中経連の活動を参考に、自分がさらにできることは何か・・・活動を広げていきたい。

信州日経懇話会

 信州日経懇話会第7回例会が開催された。今回の講演会は、合同会社エネルギー経済社会研究所・代表松尾豪氏による『脱炭素社会のカギ「水素」の可能性』という演題での講和であった。

 1 日本の排出量の現状・水素の役割

 2 水素転換に向けた道筋

 3 移行燃料としての天然ガス市場

 と大きく3つのテーマで話をしてくださった。

 クリーン水素は3つに分類される。ブルー水素、グリーン水素、ピンク水素だ。ブルー水素は天然ガス・石炭が原料となる。グリーン水素は水や再生エネ由来の電気を電解法で製造したもの、ピンクは水・原子力発電由来の電気を電解法で製造したものということも初めて知った。

 ブルー水素の場合CCSとの組み合わせが必要ということだったので、日本におけるCCSの取り組みはどこまで進んでいるのか、またLNG発電所との関係を質問してみた。6月に苫小牧のCCSの視察を控えているということもあって。

 松尾氏の回答は、苫小牧に施設があるが最終的には海外に持っていくしかないということであった。

 脱炭素を見据えたうえでの取り組みが非常に興味深かった。

新しい時代の働き方と労働法改革の方向性

 東京大学社会学科科学研究所の水町教授から「新しい時代の働き方と労働法改革の方向性」という演題での講義を受けた。労働法改革の背景から始まり近時の労働法改革の動きに関する内容である。

 「2024年問題」もあと数日でスタートする。関係する3業種は、事務所のクライアントでもある。どのように対応していけばいいかの内容もあり、大変具体的で勉強になった。

 自動車運転業務に関して、長野市内においては、タクシーの早朝予約は受け付けない、日曜日のバス全面運休という事態になっている。一般生活に支障きたす状態だ。水町氏は賃金を上げないと人出不測のままでこの状態が続くだろうという。

 企業は、安い非正規社員に頼り、賃金が上がりづらい構造になってしまっているのが問題だと指摘していた。結果、外国人労働者にとっても日本で働く魅力が低下しているそうだ。

 雇用保険改正法の内容の中で、個人に対する教育訓練やリ・スキリングによる支援が充実した。まさに「人への投資」の強化だ。企業側はうかうかしていられない、というのが個人的感想。

 最後の「これからの企業経営において大切になる視点」は、真剣になって取り組んでいかないと企業は淘汰されるという危機感が募った。

 あっという間の充実した研修であった。