長野県経営者協会長野支部新春例会

 長野県経営者協会長野支部の新春例会が開催された。記念講演会として「長野県がリードする脱炭素・GX推進における新しい価値の創出」という演題で、東京海上日動火災保険株式会社の田原氏からお話をしてもらった。

 なぜ保険会社が?という疑問があったが、長野地域脱炭素実現推進協議会事務局企業であるとのこと。この項議会は2023年8月に設立され、参加記号は50社うちCO2排出量かしか実施企業は23社とのことである。

 講演内容の中で、非常に興味深い部分があった。「地方在住の高校生と全国の大学3年生・4年生を対象とした企業の脱酸素取り組みに関するアンケート」結果だ。

 就職する企業の探索や選択基準に、地球温暖化や気候変動問題に対する取り組みを重視する割合が30~40%にのぼっている。高校生のほうが意識が高い。これは学校教育に取り入れられてきているからだ。同じ給与待遇であれば気候変動問題に取り組んでいる企業に就職したいという学生も多い。

 そしてリアルな学生の声として

 ・ どのような背景で環境への取り組みをしているのか、経営理念とどうマッチしているのか、といったストーリーが見えると信頼度が上がりよい会社だと感じる。

 ・ 環境を気にする人は余裕があり利他的な人が多いイメージがあり、「人にやさしい会社」なのだと感じる。

 等々があった。

 久しぶりに実のある講演会であったと個人的な感想。長野県に若者が戻ってこない、人材不足という中で、各企業が取り組む環境課題にも関係している時代であるということを改めて認識した。

 

長野市やまざとビジネス支援補助金二次審査会

 令和7年度長野市やまざとビジネス支援補助金二次審査会が行われた。委員長としての自分は、毎年楽しみにしている長野市の事業である。中山間地域を活性化するために、その地域でビジネスを行う者に対して1団体当たり最高500万円を補助する制度だ。

 その地域においての事業を実施することにより

 ①地域課題の解決

 ②地域における雇用の創出及び地域内への経済波及効果があること

 ③地域との協力・連携など地域の活性化が期待できる事業であること

 につながり、事業の実現性、発展性及び継続性のある事業計画の策定がなされていること等が審査基準になる。

 令和7年度対象の応募団体は、一次審査を通過した4団体が二次審査会に臨んだ。各団体はそれぞれ工夫を凝らしたプレゼンテーションを行った。中山間地域で行う事業が、ボランティアではなくどのくらい商売として成り立つか・・・。

 長野市のこの事業がスタートしたときから審査員を務めているが、近年は第1回の時よりもかなりバージョンアップした内容の事業が応募され、採択された団体は事業の展開を行い、大きく変わった地域もある。

 長野市市長も、中山間地域の活性化を公約に入れているが、その一旦を担わせてもらっていることに感謝。

 二次審査会を通過した団体は、地域の住民自治協議会との意思疎通を行ったうえで、市長が採択することになっている。

経営者のリカレント教育

 「骨太の方針2024」の内容が興味深い。その一つに「リ・スキリングの対象に経営者を追加し、2029年までに、約5000人の経営者等の能力構築に取り組む」ことが明記されている。

 信州大学ではそれを受けて、「経営者向けリカレントプログラム」をスタートさせた。対象は長野県内に本社が所在する企業の経営者・経営幹部で第1回目開講期間は2024年9月21日~2025年2月2日。

 その修了式と成果を発表するクロストークが2月2日に開催されたのでWEBで参加した。

 クロストークは~「事業変革シナリオ」と「「重合院の学び」・経営者がプログラム受講によって得たものとは~というテーマであった。

 10回の講義・演習と2回の学生イベントと修了式で構成され、未来を見据えた「事業変革構想書」の作成と、その実現を支える従業員それぞれの変化・成長を促す「学びの計画」を策定したらしい。

 その成果についての教授からの投げかけに、3人の登壇者が答えてくれた。

質問を投げかける山本特認教授

 一番印象に残ったのは、『経営者スピーチで本当に従業員は変わるか?聞く側は共感するが、「う~んでも」の「でも」をどう変えたらいいかの案または大学がすべきことは?』という問いかけに対しての登壇者の回答だった。

 ・ 共感できるスピーチができたとしても従業員は自分で決める。意思決定のプロセスに参加しえもらい、一緒に考えサポートしてもらう仕組みがあるといい。

 ・ 危機感をあおっても伝わらない。「実務が忙しい」が先行してしまう。これをどう変えていくか。全体を変えていくのは難しい。3割変わると変わっていくので、時間軸を長期にしていくことが大切。

最後にこれからの構想を示してもらった。

 成人学習の参加率が高い国は労働生産性が高いといわれており、その調査結果も公開されている。リカレント教育を受けることによって、仕事に生かすためのスキルを習得することは、自分自身の人生の在り方を変えることにもなると思っている。

グローバルビジネスの危機管理

 日経懇話会第6回例会講演会は、「海外リスクから事業と社員をどう守る?~地政学リスクの高まりと企業の対応」という演題で、コントロール・リスクス・グループ株式会社代表取締役岡部貴士氏からの講演であった。

 経営者が直面する可能性のある地政学リスクを特定し、リスク管理戦略的対応についてのアプローチを教えてもらった。

 2025年のリスクマップがあり、各地域の無事ネスリスク環境が色別に区分されている。リスクが極めて高く、今後もその状態が続くため、通常のビジネスは困難とされている国は、ロシア連邦、ウクライナ、北朝鮮、スーダン、中央アフリカ、イエメン、イラン、アフガニスタンほかである。

 分断する世界に企業はどう備えるべきかという観点では、重要な視点を3つ挙げられた。

 1 シナリオ分析とストレステストの重要性。ありえそうなシナリオだけでなく、「ブラックスワン」に対するストレステストも必要で、これは実施しているとしていないとの格差は大とのこと。

 2 プリンシプルベースの自社の「意味」を再確認。想定外の事態は必ず起こることの想定を持つことが必要。

 3 「戦後」の新秩序への回帰まで織り込んだ中長期的な対応事例からの示唆。要するに、分断化する世界や世界大戦を生き延び、戦後も発展し続けた企業の事例には示唆があるそうだ。

 今まで、このような危機管理に気が付いていなかった。一つの情報として、必要とするクライアントに提供していく必要性を感じている。

 

事業承継「脱ファミリー化」

 帝国データーバンクが発表した2024年の県内全業種約4705社に行った後継者動向調査。

 後継者が「いない」または「未定」が51.9%。

 代表者年代別の後継者不在率は、「70代」が27.1%、「80代」が23.9%であった。他の年代より後継者不在率は低いが、後継者の選定・育成ができないまま、代表者の「不測の事態」で活動できなくなるリスクもある。

 2020年以降代表者交代が行われた企業のうち、前代表者との関係性は、「同族承継」40.9%、「内部昇格」35.4%、「M&A等」17.4%、「外部招聘」4.7%。

 後継者候補については、「非同族」37.6%、「子ども」36.7%、「親族」23.0%、となり、事業承継は「脱ファミリー化」の傾向にあることが分かった。

 事務所のクライアントも事業承継に取り掛かっているところが多いが、後継者不在のため解散する企業も多い。今のところ「非同族」を目指している企業は見当たらないが、少子化問題も絡み、今後もクライアントと相談しながら進めていく必要性を強く感じている。

 代表者交代だけでなく自社株をどう受け継いでいくかも大きな課題である。

Z世代の価値観

 自分の税理士人生集大成として、クライアントの事業承継のサポートに力を入れている。年に2回ぐらいの勉強会を行っており、今回は、農林中央金庫の島田長野県担当部長から「明るい職場づくりに向けて~Z世代の価値観とは?~」という演題での講義をいただいた。

 X世代は60歳~44歳、Y世代は44歳~29歳、Z世代は29歳以下に分けられる。60歳超の人を新人類と、参加したメンバーは言っていた(笑)。参加メンバーのかつての経営者または現経営者にあたる人たちだ。

 厚生労働省がまとめた2023年若年者雇用実態調査によると、若年社員のうち「転職したい」と答えた人は31.2%。性別で、男性は「思っている」が27.7%、女性が「思っている」が35.1%。年齢階層別ではZ世代が35.0%であった。

 島田氏によると、Z世代の価値観は ①デジタル ②社会動向 ③経済動向 が大いに影響しているとのことで、

・働く目標・・・仕事を通じた社会への貢献

・働く組織・・・フラット組織、競争よりチームで助け合い、協力

・働く意識・・・ワークライフバランス、ウェルビーング

を求めていて、X世代や新人類(60歳超)の生きてきた価値観と様変わりしている。

 厚労省の調査結果でも、転職したい理由は「賃金の良い条件に変わりたい」が59.9%、「労働時間・休日・休暇の条件が良い会社に変わりたい」が50.0%となっている。

 また雇用形態別の満足度として、正社員は「雇用の安定性」66.4ポイント、「職場の人間関係、コミュニケーション」57.3ポイント、「仕事の内容・やりがい」55.2ポイント。正社員以外は「仕事の内容・やりがい」が59.9ポイントだった。

 今春、新卒者が入社してくる。今回の研修が、明るい職場づくりに向けた方向性を見定める一つの参考になればいいなと思っている。

申告漏れ相続税課税価格

 関東信越国税局が行った2023事業年度の相続税調査のうち、長野県内の調査件数は143件。うち申告漏れ件数は122件、申告漏れ課税価格は44億円だった。追徴税額は、本税が7億300万円。

 課税価格の総額は2409億円で、相続財産の構成比は、現金・預貯金等が43.0%、土地24.0%、有価証券14.1%、家屋5.1%。

 相続税の申告をする際に、この預貯金の調査が一番時間がかかる。手は抜けない。それを相続人がどれだけ理解できるか・・・であるが、こうした資料で説明するのも一つの方法だろう。

申告漏れ所得上位10業種

 関東信越国税局管内が実施した2023事業年度の所得税と個人事業者の消費税調査での結果が発表になった。申告漏れ所得上位10業種は下記の通り。

1 内科医 3,133万円

2 経営コンサルタント 2,035万円

3 ブリーダー 2,006万円

4 歯科医 1,751万円

5 溶接 1,666万円

6 製図設計士 1,600万円

7 施設園芸農業・果樹 1,506万円

8 システムエンジニア 1,363万円

9 コンテンツ配信 1,336万円

10 ダンプ運送 1,335万円

 上記とは別に、所得税無申告者を1011件調査。1件当たりの申告漏れ所得金額は2,294万円で、申告漏れ所得金額の総額は232億円。

 消費税無申告者の調査は1384件。追徴額の総額は37億円。消費税の還付申告者の調査は128件。追徴税額の総額は2億円。

 この結果をどう受け止めるか。無申告者からの追徴税額が多いのは当然だが、この点を重点的に調査してもらいたいと誰もが感じるだろう。

長野県に「住みたくない」理由

 地元紙が行った調査結果が紙面に掲載されていた。県内公立高校3年生2千人を対象にした男女共同参画に関する意識調査だ。

 「県内に住みたくない」と考える女性は15%で、男性9%。理由はいろいろあるが、「性別を理由に何かをやらなくてもよい、やらなくてはならない」などと言われたこともあり、性別による偏見や差別などを理由に地元から離れたいと思っている人が7%いた。

「住みたくない」理由に

① 他に住んでみたい地域があるから

② 娯楽や遊べる場所が少ないから

③ 交通が不便だから

④ 希望する仕事や魅力ある仕事がないから

⑤ 地域の人づきあいが煩わしいと感じるから

 以上の項目は今までも挙げられてきたが、 性別による偏見等の理由で地元から離れたい・・・ということがあるのは、今まで意識をしたことがなかった。

 上記については、どのように対応していったらよいかが議論されてきていたが、性別役割意識も影響していることについては、県民全体が変わっていかなくてはならない部分だ。

 経営者側として、働きやすい環境を整えるということに視点が集中していたが、無意識の性別役割意識も変えていかなくてはならないことに気づいた。

 今年の春、採用した2名の新卒者が入社する。働く環境を整えるとともに固定的な性別役割分担意識をのぞいていかなくてはならないことを、改めて感じた。

新春講演会・賀詞交歓会

 長野県経営者協会主催の新春講演会と賀詞交歓会が開催された。

 碓井会長のあいさつでスタートした。要旨は下記の通り。

『新しい知恵を生み出し、新しい価値を作り出す。国を豊かにし、安全保障を担保する。いかに世界に対する日本の存在感を出していくか。

 また若者、女性を登用し、競い合いながら切磋琢磨して国を豊かにしていくことが必要。英知とともに、従業員とともに入社する若者たちの期待に応える環境を作ること、しっかりした期待できる環境、価値を作り出すことによって、企業、経済が成長する。

 今まで厳しい環境の中、自然とともに産業を営んできた。これからはその延長線上ではなく、新しい価値を生み出していくのだ。そうした経営者の覚悟が問われる1年である。』

 一言一言が自分の胸に落ちた。、企業や国が発展するために新しい価値を生み出すことが必要であり、経営者の覚悟が問われる1年。

 自分にとって、これからの1年の在り方をどう見出しどんな覚悟をもって歩んでいくか、その姿が問われていくのだ。企業規模の問題ではないと思っている。

 新春講演会では、元女子バレーボール日本代表の大山加奈氏が「繋ぐ~バレーボールが教えてくれたこと~」という演題でお話しをいただいた。