信州日経懇話会第4回例会は、日本経済新聞社・編集委員・田中陽氏が講師で「ポストコロナの消費の行方」と題しての講演があった。
演題からして堅苦しい話かな・・・と思っていたら、そうではなく、一つ一つが興味深かった。まずは島耕作が登場。島耕作は課長時代に一番仕事をして、部長時代に日経平均が下がり、社長時代には経済どん底、会長時代に景気を取り戻し、今は社外取締役時代を送っているという導入からして楽しい。
今の経済はどうなっているか・・・という点について田中氏は言う。
「大企業は利益をためて使わない。少子化で若者が減り消費も減っている。人件費と諸経費を削りすぎてきたために経済が成長しない。」
一つ一つ納得する。そして意外だったのは、日本の経常的収支赤字国はイタリアとスイスであるということ。イタリアからは、ブランド品やパスタ、オリーブオイルなどの輸入が多い。スイスからは薬品と手作りの時計の輸入が多いからだそうだ。
2国の特徴は、①観光立国、手作りづランド立国 ②高い人件費と短い労働時間国 ③大都市でなく農村、漁村に経済力、競争力がある ④地産地消の本家 ということだ。
1988年の家計支出は月平均29万円で2022年の家計支出も29万円。なのに現在消費をした感じがないのは・・・?保険医療費で2.5倍の支出。これは高齢化社会の現象であり、スマホデーターの関係で交通通信費の支出も多い。そして水道光熱費などの支出増があるからだ。食品支出は伸びているが、これは物価上昇によるもので、酒類は家飲みが多くなった。外食はコロナ前に戻り、服や靴の購入はコロナ前に戻っていない。旅行費用は、8月にコロナ前に戻り、ネット通販は毎年前年を上回っている。特筆すべきことは世帯主の小遣いがコロナ前に全く戻っていないとのことだ。
セブンイレブンとイトウヨーカ堂の仕事の向かい方の違いから、いかに仕事に深みを持たせると違ってくるかが顕著に分かった。せんべいの取り扱いで、ヨーカ堂は売れそうなものを取り入れた。セブンイレブンは、商品のおいしさを因数分解した。そしておいしいものを組み合わせる研究もして、セブンプレミアムの原型ができた。セブンイレブンには仕事の深みがあったのだ。
以上の内容の話をお聞きして、世帯主の小遣いが少なくなっているのは、家族関係にひびが入る原因にもなりかねない。経営者として十分な給与を支給する責任を感じた。また深みのある仕事をすることが、企業の発展につながるということも改めて胸に落ちた。
久しぶりにいい話を聞いた時であった。