初給料

 少し前のことだけれど、新入所員に初給料を支給した。入社してから毎日にこにこしながら仕事をひとつづつ覚えるために頑ばっている。新しいことを吸収するのは楽しいだろうし、学生時代には経験しなかったようなことにビックリしている部分もあるだろう。

 ふと自分のことを思い出した。
 仕事を始めた時には、時間を気にせずにどんどん仕事をこなしていった。一つのことが終わると、「何か仕事をください!」と先輩にお願いした。
 自分が働くといことに不思議な魅力を感じ毎日が楽しかった。デスクワークだけでなく、雑用による外出も積極的に手を挙げた。雑用から学ぶことも結構あるのだ。
 「これを誰かやってくれる?」と先輩から声が出ると、必ずと言っていいほど自分が申し出た。
 充実している毎日だった。
 初給料をもらった時は嬉しかった。初めて得た労働の対価である。その時に同期の一人が所長に「所長さん、お給料を有難うございました。」とお礼を言ったのだ。私はビックリした。先輩たちもビックリしたようだ。同期の言葉にはいろんな気持ちが込められていて、働かさせていただいて有難う、その労働の対価とはいえまだ戦力にならないのに給料を支給してくださり有難う、いろんなことを学ばさせてもらう環境に有難う・・・等々がお礼の言葉となったのだ。
 ビックリしたと同時に恥ずかしかった。その時に私は何も言えなかったからだ。
 同期から学んだこともたくさんあるが、このことが一番かな。
 私の初給料の一部を家に入れたことは覚えているが、あとはどうしたか記憶が定かでない。

 事務所の職員たちは、給料や賞与が支給されると必ずお礼を言いに私の執務室に来てくれる。その際に普段話ができないちょっとした事の言葉を交わすことができるのが楽しみだ。
 それに、私の執務室に入るきっかけにもあるだろうしね。

ヒメイチゲが咲いていた。