中央アルプスの宝剣岳の真東に座する烏帽子山(2122.9m)は登山道がない山だ。私の尊敬する南川金一氏は残雪期を利用して1993年4月の登頂している。
2000m以上の登山道のない山で日帰りできそうな山が少なくなってきた。この山なら今の季節に登れるだろうと思い、黒川渓谷の宮田高原キャンプ場から入山した。ルートは、黒川を渡渉して尾根に取り付き、烏帽子山と黒川山の中間地点の鞍部に出て両山のピークを踏むコースだ。
前日かなり雨が降ったので、黒川の渡渉ができるかどうか・・・。だめなら伊勢滝経由のうどんや峠からのピストンになる。この場合には時間がかかるだろう。どうなることやら。
すでにクローズしている宮田高原キャンプ場の駐車場まで車を走らせた。
そこから黒川沿いにできている林道を約30分歩くと取水所が出てきた。この先で渡渉できるところを探す。目標とする烏帽子山と黒川山を繋ぐ鞍部に出る尾根に取り付く付近で、流れの緩そうなところを発見。水が冷たいのを覚悟で渡渉に取り掛かる。頭の芯までしびれるぐらいに、う~ん冷たい。ここでひっくり返ったらアウト。慎重に左岸から右岸に渡り切って、ふ~。
第1の核心部はクリアできた。
さてここからである。左岸から見えた斜面に取り付く。かなり急である。
気が付いたら背丈以上の笹藪の中を登っていた。尾根を外さないように笹を漕いでいく。いつものことだ。時間との勝負でもある。ほとんど休まずに登り切り、スタートしてから約4時間で目標とする鞍部に飛び出した。
あ~ここは何という楽天地?ほとんど藪のない気持ちのいい稜線。すぐに烏帽子山を目指して南東に歩いていく。すごく楽だ。
あっという間に烏帽子山の山頂に到着した。不思議な広場になっている。眺望はない。三角点を確認しいつもの儀式をしてすぐに来た道を戻る。今度は黒川山を目指す。烏帽子山から1時間ぐらいで黒川山のピークを踏むことができた。ここも眺望はなし。いつもの儀式をして下山に取り掛かる。
雪も降りだしてきた。途中暗くなっても安全なうどんや峠経由のルートをとることにした。標高点2208mまで来た。ここからすぐに一般道となるうどんや峠だ。細い尾根を少し進んでうどんや峠に出た時にはホッとした。
ここから伊勢滝方面に向かう。進入禁止の意味か伊勢滝方面にはロープが張られていた。しかし行くしかない。なるほど峠から急坂を下るが、ルートがはっきりしない。まあ慣れた感覚でガンガン下る。やがて黒川の上流に出た。ここで渡渉だ。雪も降っているので、朝の渡渉よりもつらいか!この渡渉も核心だった。
渡渉後はしっかりした登山道が続いており、予定より1時間早く駐車場所に戻ることができた。
ほとんど眺望もなく、ただ2000m以上の山を、また一つ登頂できた喜び。自己満足にすぎないが、南川氏の後を追いながらこうした山登りはやめられない。
雪は想定外だった。もう山は冬が迫っている。
飛び出した稜線にはびっくり。歩きやすそうな稜線だ。ここから南東に向かっていく。