小嵩沢山(2387.3m)も登山道のない山だ。
1ヶ月ほど前に島々谷のワサビ沢へ入渓した際に、このワサビ沢を詰めて小嵩沢山に登るのも一つのルートと考えた。その後地図を眺めているうちに閃いたのが、水殿川へ入渓し大東沢を詰めて小嵩沢山のピークに立つルートである。
私の尊敬する南川金一氏は、残雪期に徳本峠との鞍部から続く尾根を利用して登っている。
う~ん残雪期まで待てない!
今の季節、沢登と小嵩沢山を合わせて楽しんでみよう。2日間の行程で・・・ということで、天気が保証された秋の連休にいざ出陣。
1日目
水殿川の取水口へ続くトンネル入り口。トンネルの入り口に電気をつけるスイッチがある。だからヘッデンなくても通り抜けはできる。
取水口まで約1時間。堰堤を越したところで入渓した。992m地点で現れる左岸の滝。
最初は平凡な流れが続く。両岸には踏み跡が結構あることに気が付いた。
右岸が岩壁になっていて進めない。左岸へ渡渉するも水量が多く緊張。
左岸の桂立沢までやってきた。ここまではテン場適地がたくさんあった。しかし今日の目的は大東沢出合まで。まだまだ半分しか来ていない。
川岸の踏み跡を利用したり、渡渉を何回も繰り返し進んでいく。
昔山林を切り出し運搬したと思われるトロッコのレールがところどころ残置されていた。このような人工物に山奥で出会うと、環境保護の点から行政の対応が気になってしまう。
遡行するにつれて益々水量多く流れもきつい。渡渉中に何回も足を取られそうになった。
スタートから約7時間。初日の目的地である大東沢出合にやってきた。右が大東沢、左が水殿沢本流。出合の地にテントを張った。
定番の焚火。モロコシ、ジャガイモや餃子を焼いたりして、まったりした時間が過ぎていく。アルコールも十分。
疲れたが、いよいよ明日、大東沢を遡行して小嵩沢山のピークに立つと思うとテンションが上がる。気温が高く、思っていたより暖かい。
2日目
午前4時に起床。今日は、大東沢を詰めて小嵩沢山までピストンして下山予定。時間がよく読めないが、1時までにはテン場に戻ってきたい。
荷物を最小限にして5時過ぎにスタートした。夜明けが始まる。しかし谷間なのでまだ暗い。ヘッデンを頼りに大東沢を遡行して行く。水は冷たくない。
ヘッデンの必要がなくなるころに、二俣に来た。目印は大岩。この二俣は右に進む。こちらが本流。
特に難しいところはなく、どんどん高度を上げていく。ただ藪沢なので倒木もあったりして、乗越すのが大変。水はだんだん冷たくなってきた。
やがて三俣に出る。この三俣は一番左の沢に入る。
三俣に入って間もなく、核心部である2段の滝が出現。豊富な水量が落ちている。一段目は流心を登れそうだったが、この時季に濡れるのは辛い。残念だが右を高巻くことにした。
2段の滝の落ち口の少し上で沢に戻る。少し進むと右岸から立派な滝が落ちていた。
2100mぐらいの地点で伏流水となる。涸れたところを詰めていくと笹藪。急斜面でもあり腕力で登っていく。
笹藪との格闘は約1時間。稜線の目標とする地点に出た。木々の間から見えた穂高連峰。小嵩沢山のピークまでもうちょいだ!
ここからは藪漕ぎなしてピークに立てると思っていたが・・・。
シラビソの激藪とまた格闘することになった。密藪でなかなか前に進まない。15分ぐらいの藪との格闘で小嵩沢山の山頂に到着した。眺望はなし。三角点を探したが笹藪に囲まれ見つけることができなかった。
大東沢に出るまでは、笹藪の急斜面を下るようになる。ロープを何回か出して急降下。大東沢の核心部である2段の滝は高巻いた右岸を下降した。
時間がない。予定より1時間ほど遅れている。気持ちが焦る中、ホッとした植物が。
テン場に着き、時間が迫っているにもかかわらず祝杯を挙げることだけは忘れない。ほとんど飲まず食わずの行動に、ビールがおいしい。この瞬間の至福の時。
急いでテント撤収。2時に下山に取り掛かる。明るいうちに取水口までは到着したい。沢で暗くなってしまったらアウト。ビバークとなってしまう。
あと4時間か・・・!行けるか?行くしかない。
ガンガン沢を下った。何回も渡渉を繰り返し、取水口の堰堤が見えた時にはホッとした。明るいうちに堰堤まで戻ることができた。ここまで4時間弱かかった。
駐車場所まであと1時間かかる。途中ヘッデンの光を頼りに7時前にすべてが終了した。まあ~よく歩いたわ。
沢登りで小嵩沢山のピークに立てたことは感慨深い。天気にも恵まれたし、すべてに感謝だ。