長野県朝日村に烏帽子岳という山があるのを知ったのも、南川金一氏の著書『続 山頂渉猟』であった。
1週間前に仏谷のピークに立った時には、鉢盛山や小鉢盛山がよく見えたが、その前に存するはずの烏帽子岳は確認できなかった。名前につられたこともある。
次は朝日村から南川さんコースで烏帽子岳を登ろうと、天気が約束された日に朝日村のどん詰まりまで車を走らせた。
野俣沢と中俣沢の間の尾根に取り付く。
急登りではないが快適に高度を稼ぐことができる。雪の締まり具合もいい。これなら楽勝!と思っていたら、1332mあたりから雪が深くなり、しかも北斜面であるためか一足ごとにラッセルが必要になってしまった。しかも足の付け根まで埋まるのだ。ヤレヤレである。
それでも木々の間から鉢盛山や目指す烏帽子岳が見えると、まだまだ行けると自分を励ます。
折れそうになる心と闘いながらも、もう少しと攣りそうになる足を前に出していく。1720mのところで突然現れた烏帽子岳に感動。
ここまで4時間かかっている。予定では山頂に立っているはずであった。烏帽子岳はだいぶ近くなっている。しかしこんな雪の状態では、あと3時間はかかるだろう。今日はあきらめるしかないか・・・。
南川氏はこの烏帽子岳を『この山の持ち味は何かといえば、それは、まったくひと気のない静かさであろう。』と書いている。
誰にも会わない、もちろん人の足跡は全くない、静謐な空気に囲まれた山歩きに烏帽子岳の山頂への想いを残して下山した。
1952.1m。あのピークを目指して御馬越まで車を走らせた。
烏帽子岳が見えてきたこのあたりからは、膝から足の付け根までのラッセルになる。
4時間かけてるが、ラッセルのためになかなか進まない。烏帽子岳の姿に励まされるが・・・。
時間切れでここまで。雪がなかったら藪漕ぎでも、あと1.5時間ぐらいでピークに立てただろう。