7月15日
今シーズンの沢デビューは中央アルプス。将棋頭山の頂上直下へ突き上げる正沢川本谷を選択した。
中央アルプスの西側の沢は明るくていい。今シーズンの沢デビューにはもってこいだ。日帰り遡行をするパーティーもいるが、それじゃあもったいない。
1日で正沢川本谷は抜けてしまうので、噂の西駒山荘に1泊することにして入渓した。
ゆっくりの遡行となる。
ちょうど1年前に正沢川から分かれる細尾沢を遡行しているので、その二俣までは様子もわかっていて気が楽だ。しかしである。途中ヘツリがあり、なんとそこで首までドボンをしてしまった。実に想定外。
とはいっても予定通り3時間で二俣に到着した。
いよいよこれからだ。
日本登山体系には「倒木が多い」と記されていたが、なるほど倒木を乗り越えての遡行となった。そしてなんと雪渓が残っているではないか!
心が折れそうになる。
薄くなった雪渓の上をそ~っと進む。大きな倒木に助けられてなんとか雪渓を抜けたところがゴルジュであった。このゴルジュの通過は楽しかった。グレードⅢぐらい。
ゴルジュを通過すると15メートルの滝。ここは直登無理で左岸のルンゼを登り3メートルほどの小滝を超して落ち口へ。
その後の小滝が連続して登攀が楽しい。
再び二俣。水量は右俣が多いが本谷は左俣。
どんどん登りあげ源頭が過ぎると地獄の藪漕ぎが始まった。ここでも背丈以上の這松に泣かされた。登山道2730メートル地点に飛び出したときにはうれしかった。
西駒山荘までルンルンで15分。
その日は静かに夜が更けていった。
カモシカが。近づいても逃げていかない。よく見ると左後ろ足を骨折しているようだ。どうしてあげることもできない。「ごめんね」とつぶやきながら通過。カモシカは悲しそうな眼をしながら振り返っていた。
雪渓が出てきた。この上をいかなくてはならない。ちょっと心が折れそうになる。
次に現れたのは15mの大滝。この滝は直登無理で、左岸のルンゼを登りあげ、3mぐらいの小滝をトラバースして落ち口に。
7月16日
夜が明けた。
さわやかな空気を胸いっぱいに吸い込む。将棋の頭までピストンして、将棋頭山から茶臼山のピークを踏んだ後茶臼尾根を入渓地点まで戻った。茶臼山山頂からは、今までに遡行した沢筋がよく見えた。
素晴らしい夏山ジョイだった。
早朝の左手前は伊那前岳。中央に宝剣岳。その右のピークが中岳。
西駒山荘の管理人が望遠鏡を設置してくれた。槍ヶ岳がよく見えた。覗いているのは管理人。夜星空の時は、この天体望遠鏡で星を観測できる。
茶臼山山頂より遡行した沢の確認。右の雪渓が見える沢は細尾沢。正沢川本谷は一番左の沢筋。