剱岳の北方稜線は、宇奈月温泉を起点として剱岳まで繋げようと何年かにわたって歩き続けている。
現在空白となっている区間は、駒ヶ岳から毛勝山である。この間は残雪期に歩くのが一番いい。登山道は開かれておらず雪が消えると藪漕ぎを強いられるからだ。
いよいよその時がやってきた。
3日間天気はいい。
2泊3日で宇奈月温泉から僧ヶ岳山頂直下でテントを張り、翌日は僧ヶ岳から駒ヶ岳そして滝倉山までピストンする予定で出かけた。私の尊敬する南川金一氏は、同じ時季にそのコースを踏破している。行くしかない!
実は何年か前に、片貝から僧ヶ岳~駒ヶ岳を往復している。それだけに宇奈月温泉から入山したかったし、何より南川氏の足跡をたどりたかった。そして夏道のない駒ヶ岳からは先は、今しかチャンスがないのだ。行けるか?
初日の5月3日。予報通り天気に恵まれた。
宇奈月温泉からは、誰も入山した形跡がなく、少しルーファイに苦労しながらも快適な足取りで僧ヶ岳頂上直下まで登りあげることが出来た。すでに雪が消えて笹が密生しているいい場所にテントを張ることが出来た。正面には僧ヶ岳が鎮座している。
星空が翌日の天気を保証してくれた。
5月4日。
素晴らしい夜明けとともに目が覚める。きりっとした空気が気持ちいい。
さあ~行くか!
僧ヶ岳山頂に立つと、片貝から昨日のうちに登ったらしい足跡が残されていた。駒ヶ岳へとトレースが続いている。
雪はところどころクラックが入り、慎重に足を進める。夏道も出始めていた。快適に来た駒ヶ岳のピークを踏み、やがて駒ヶ岳のピークに立つ。ここにテン場の跡が残されていた。
毛勝山が大きい。その奥には剱岳が見えている。ウドノ頭の存在感が大きく、その左に位置する目的の滝倉山はまだまだ遠い。ゆっくりしていられない。
しかし駒ヶ岳から先が大変だった。
すでに残雪の賞味期限は切れ、かなりの藪が出ている。この藪漕ぎが思わぬ時間を要した。想定外。雪渓を拾えるところはなるべくつないだが、どうしても藪を漕がなければらない場所をやっと5か所通過した。今年の雪は例年通りといわれていたが、この1週間の暑さでの雪解けは、かなり進んだようだ。
タイムリミットは11時。1801mのピークに立つ。滝倉山山頂を目前にして、引き返ざるを得なかった。ちょっと悔しくて、涙がこぼれちゃった。
テン場に戻ったのは夕方5時であった。この時間からすると、1801mピークで引き返してよかったのだが・・・。
今更ながらに、南川氏の力に敬服だ。やっぱり南川さんてすごい!
富山湾の残照の美しさにも涙がこぼれた。悔しさが癒えない・・・のだ。
5月5日。
心を残し下山に取り掛かる。途中男性二人のパーティーに出会った。サンナビキ山までピストンの予定で入山したそうだ。サンナビキ山については、滝倉山から足を延ばせたら・・・と密かに思っていただけに羨ましい。この二人なら行けるだろう。
何回も振り替えながら、滝倉山やサンナビキ山を確認した。いつかきっと・・・!
今もちょっぴり泣けてくる。
仏平を過ぎ、僧ヶ岳頂上直下の1800m地点にテントを張った。
富山湾の残照。ゆっくりと時間が流れ、明日のことに思いを馳せる。
そして駒ヶ岳。その右に滝倉山、更に右はウドノ頭。駒ヶ岳と滝倉山の奥には鹿島槍ヶ岳。駒ヶ岳の左奥には不帰の剣と唐松岳。う~ん素晴らしい。待ってらっしゃい。
正面に駒ヶ岳。その右奥に滝倉山とウドノ頭。滝倉山の後ろには鹿島槍ヶ岳。
駒ヶ岳山頂。ここも2回目。夏とは違う別世界。途中夏道も出ていた。
正面に毛勝山。その左に剱岳。剱岳までの北方稜線を繋げたいのだ。毛勝山から剱岳までは踏破している。この駒ヶ岳から毛勝山まではこれからだ。
右手前が滝倉山。滝倉山から左に出ている間白い稜線のピークがサンナビキ山。その後ろには後ろ立山連峰が繋がっている。サンナビキ山の後ろが鹿島槍ヶ岳、その左に五竜岳、更に左が唐松岳と不帰の剣。
悔し涙も、こんな風景で癒される・・・か。4日の富山湾の残照。