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硫黄岳を目指して急斜面に取り次いでから約1時間、順調にかなりの高度まで登ってきていた。 浮石も多かったが、草付や木をうまく利用して特に苦労はなかった。ただステップを自分で切らないと足が定まらない。しかしなんら危険を感じることなく上へ上へと目指していた。
突然、右手で持った岩がポロリと土壁から離れ、持ちかえようとしていた左手は空をつかみ、体がゆっくりと宙に投げ出された。 体が横になって回転しながらどんどん下に落ちていく。 「あ〜、せっかく登ったのにどこまで落ちていくんだろう。また登り返しか・・・。」 なんて考えながらも体が止まらない。 「どうするか。どう止めるか!」なんて思った瞬間に倒木を乗り越えてやっと止まった。
ふ〜。 怪我のことは全く考えなかった。それよりも登り返し!なんてことが頭を横切り、駆けつける仲間に立ちあがって手を振る自分。
なんとまあ〜である。 メガネは飛ばされた。サブザックはズタズタになった。ヘルメットは割れた。熊よけ鈴もなくなった。手に引っ掛けていたストックは無事だった。 怪我は・・・というと、顔右半分に打ち身と擦過傷。からだ左半分に打ち身と左手左足に擦過傷。痛みは擦過傷の痛みだけ。
気持ちも落ち着いて自分を観察。 大丈夫。骨折のことは一切頭になかった。下山しようという仲間に、硫黄岳の山頂にどうしても立ちたい思いが勝った。 その後は何の支障もなく硫黄岳の山頂に立てたのだ。
ヘルメットが自分を守ってくれた。 もしヘルメットをかぶっていなかったら、終わっていただろう。ぶつかった倒木も朽ちかけていて柔らかかった。堅かったら骨折していたかもしれない。急斜面を転がる途中に岩はなかった。岩にぶつかっていたらどうなっていたか・・・。
下山後当番医ドクターに診察をしてもらった。 頭のCTも撮ってもらい、結果一切異常なし。ただ顔の擦過傷と打ち身の後、手と足の擦過傷の治療に通院が続いている。 しばらくはマスクを外せないだろう。内出血で黒くなってしまって・・・。
自分を守ってくれた割れたヘルメットは絶対に捨てられない。感謝。
クモマグサに出会えてよかった。絶対に無事に帰らなくてはいけない。
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07:17, Saturday, Sep 26, 2015 ¦ 固定リンク
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