「山中無暦日」と書かれた掛け軸のある落ち着いた部屋での食事は、息子が用意してくれた。京都の老舗旅館である。 社会人になって3年目。 「やっと両親を招待することができるようなったよ。」と息子は嬉しそうに、そしていたわるように言った。
「山中無暦日(さんちゅうれきじつなし)」は、「自然と共に生き、自然の呼吸の中に生かされていれば、そんな世間的な時間の流れなどまったく忘れてしまって気にもならない。」という意味だという。禅語である。なんか偶然にも私にピッタリだった。
昼間は初めて息子が生活する寮へいった。環境のいい場所であった。 少しずつ親の手から離れ、今では立派に独立した息子の人生に、まぶしさを感じ、しかし分別ある大人になったと、それが何より嬉しい。 社会人として、アスリートとして歩んでいる息子の気持ちに、胸一杯の一日だった。
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