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現れた年金
 現在、N学校法人の理事長であるN氏は年金受給者です。
 N氏が50年前にN営利法人を設立した際には厚生年金に加入してきたからこそ、現在生活に困らない程度の年金を受け取っています。
 法人設立までには、波乱万丈の人生を送ったN氏でした。
 昔話になると必ず出てくる話が、下関で丁稚奉公をしたときのことです。今の時代には考えられませんが、昭和20年代は当たり前のように経験した人が多く、苦労だっただけに一番心に残っている時代なのかもしれません。
 その時の話をするN氏は、懐かしむように、けれど嬉しそうな表情です。今のN氏があるのは、その時を経てきたからでしょう。商売人の根性も学んだ時だったそうです。
 少子化時代ではありますが、N氏は安定した学校経営を行なっているのも、その時の経験があるからです。

 そんなN氏。ふとしたことから、下関時代の年金はどうなっていただろうかと思い始めたのです。
 当時の給料は月1万円。住み込みでしたから、給料から食費を払い、生活雑貨を購入したらほとんど手元に残るお金はなかったそうです。
 果たして年金に加入していたかどうかも分かりません。当時勤めていた先の屋号は分かりますが、住所は確かではありません。
 そんなあやふやな状態でしたが、ある機関で調査してもらいました。

 しばらくして届いた通知。その当時、年金に加入していたことによる年金額の変更通知でした。
 感動!年金額が増えたことの喜びもありますが、昭和20年代の終わりごろ、下関で働いていたことの証となるものが形となって現れた喜びが感動となりました。
 N氏の人生の基盤となった期間が、今こうして形を変えて再び出現した喜び。
 思い出しはしても、思いがけずに形となったその期間に再び出会えたのです。

 感動!感動!とN氏は嬉しそうに微笑んでいました。私も感動!
 
03:29, Saturday, Aug 07, 2010 ¦ 固定リンク

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